良い先生との出会いは、その後の人生を大きく変えますが、それは勉強もスポーツも同じ。
良い師範に教えてもらうことで、その後の空手人生は大きく変わります。
良い師範の指導によって門下生は強くなり、道場の中に強い選手がたくさんいるという状況が生まれます。
それは選手にとってとても良い環境であり、お互いに切磋琢磨していく励みにもなるのです。
つまり、通う道場によってその後が変わってくるということ。
そのため、道場選びはじっくり検討して決めることが重要です。
もし、これから子どもに空手を始めさせたいと考えている場合や、「今通っている道場ではあまり上達しないため、道場を変えたい」と思っているのであれば、今回紹介するポイントを踏まえて道場見学をしてみてください。
道場選びの前に知っておきたいこととは?
空手には多くの流派が存在しますが、流派の違いから異なる点は主に下記の3点。
- 試合のルール
- 型
- 年間に行われる大会の回数
また、流派について知る前に、何より知っておかなければいけないことがあります。
それが、伝統派空手とフルコンタクトの違いです。
まずは、このふたつの違いについて紹介していきます。
伝統派空手とは?
伝統派空手とは、いわゆる寸止めと言われている空手のこと。
寸止めという言葉を聞くと、「実際に打撃が当たることはないため、安全だ」と勘違いしている人もいるようですが、実は試合や練習の中で打撃が当たることは珍しくありません。
日本で最も大きな空手団体である「全日本空手道連盟」は伝統派空手です。
- 試合形式はポイント制
- インターハイや大学選手権といった有名な試合で採用
東京オリンピックの試合でも、伝統派空手のルールが採用されています。
中学生はもちろん、高校生になればインターハイという大きな舞台も用意されているため、試合経験という部分で考えれば、こちらのルールに触れる機会は多くありますね。
フルコンタクト空手とは?
一方、フルコンタクト空手と呼ばれているものがあります。
先程の伝統派空手が寸止めなのに対して、フルコンタクトの場合は直接の打撃が認められています。
ただし、基本的には多くの流派で顔面と金的への攻撃は認められていません。
空手のことを詳しく知らない人にとっては、フルコンタクト空手のほうが「空手」のイメージに近いかもしれませんね。
代表的な流派に、「極真空手」が存在します。
また、K-1を創設した石井和義氏が立ち上げた団体として有名な「正道会館」もフルコンタクト空手です。
「フルコンタクト空手は、直接打撃のため子どもにとっては危険ではないのか」という考えもありますが、子どもの場合には防具を着用するなど安全面にも配慮されているため、必要以上の心配はいりません。
どちらの空手を選ぶべきなのか?
伝統派空手とフルコンタクト空手、それぞれの特徴が分かったところで気になってくるのが、「どちらの空手を習わせるのか」という点。
もちろん、どちらの空手も心身を鍛えるという部分においては同じであり、どちらかが劣っているとか優れているというわけではありません。
空手を「武道」という部分だけでなくスポーツとしても考えるのであれば、インターハイやオリンピックといった大舞台が用意されているのは伝統派空手であり、より実践に近い強さを求めるのならフルコンタク空手が近いですね。
「いきなりどちらかに決められない」という場合には、先に道場の見学をしてみることもひとつの手です。
近くにあるいくつかの道場に問い合わせ、伝統派空手なのかフルコンタクト空手なのかを確認して、それぞれの道場を見学してから決めても遅くはないはず。
何かを習う時には、「どこで習うのか」「誰に習うのか」という点が大切ですよね。
次章では、道場選びのポイントについてご紹介します。
道場選びの3つのポイントとは?
先生の人数
まず、最初に確認しておきたいことが先生の人数です。
先生の人数は、道場によって違いがあります。
一人の先生が全ての生徒を見ているという道場もあるでしょうし、二人、三人といった先生が教えている道場もあるでしょう。
先輩道場生が先生と同じように指導している道場もあります。
重要な点は、何人の大人たちが子どもたちを見ているのかということ。
生徒が多ければ、当然、先生が見られる範囲も限られてくるため、どうしても教えられる時間や内容に限界が出てきてしまいます。
先生が複数いれば、基本練習だけを皆で行い、その後は実力に応じてグループ単位での練習ができるため、子どもの状況に合わせた練習が可能。
それぞれの状況に合わせた練習ができる環境は、上達していくのに最適な環境です。
道場を選ぶ際には、複数の先生がいる道場を選ぶとよいですよ。
定期的な試合の存在
練習だけをしていても、自分の力量を見極めることは難しいでしょう。
だからこそ、定期的な試合の有無が重要となります。
試合を行うことによって子どもたちは自分の力量を知り、勝ち負けを経験して様々なことを学ぶのです。
この「試合で学べること」は、決して小さなものではありません。
本番でしか味わうことのできない「緊張感」や「痛み」があり、これは空手の醍醐味だといえるでしょう。
経験に勝るものはないと言っても決して大袈裟ではありません。
生徒の人数
道場に在籍している生徒の数もチェックしておきたいポイントです。
先程、師範の人数が重要だという部分でも説明しましたが、生徒が多ければ多いほど先生が指導できる時間と内容に限界があります。
だからといって、生徒の人数が少なければよいというわけではありません。
生徒の人数は多いほうが強くなれる環境だといえますが、その理由はいくつかあるため、下記から順番に説明していきます。
何よりも重要なポイントは、他者と比較ができるという点。
勝った、負けたが全てではありませんが、だからといって無視できるものでもありません。
普段の練習や昇給審査の結果、試合での勝敗などによって、子どもたちは自分の強さを認識していくようになります。
その中で、「負けたくない」という思いが芽生えてくることもあるでしょうし、後から入門した子がいつの間にか自分と同じ型を練習している姿を見ると焦ることもあります。
また、負けたことがない相手に組手で負けると、「悔しい」という思いも生まれてくるでしょう。
こういった感情が子どもの心身を育てていく栄養剤になるのです。
ライバルの存在は、仲間と同じぐらい重要です。
ライバルや仲間との練習や組手を通じて、子どもは現在の自分の力を知っていく……つまり、他者を通じて自分を知ることができるのです。
その対象となる相手は、多ければ多いほど良いです。
また、生徒が多いということは、それだけ様々な年代が集まるということ。
学校では知り合えなかった人との出会いも、ひとつの成長につながります。
また、共に汗を流し、笑い合える仲間は一人でも多いほうが楽しめるという点も、長く続けていけるポイントとなります。
空手は個人競技ではありますが、共に練習に励む仲間の存在は大きな支えになるのです。
道場見学時にチェックしたいポイントとは?
通い始める前に、実際に自分の目で確認しておくほうが安心であるため、まずは道場見学をおすすめします。
あまり空手に詳しくない場合は、複数の道場を見学し、比較してから決めましょう。
この章では、どのような点を確認し、比較すれば良いのか、道場見学の際にチェックしておきたいポイントについてご紹介します。
生徒の靴の状態
武道は心身を鍛えるためのものであり、精神的にも成長しなければいけません。
そこで、重要となるのが”基本的なこと”です。
そのひとつが、脱いだ靴を並べるということ。
道場に入った時に最初に視界に入ってくるのが入り口にある靴です。
さすがに、靴が脱ぎ散らかされているような道場は少ないと思いますが、それでも生徒たちがどのような意識をもっているのか?ということを知るひとつの物差しになります。
自分の靴を並べる生徒は多いと思いますが、それが他人の靴であった場合はどうでしょう?
例えば、後から来た生徒が並べられていない靴を並べる、といった道場では、基本的な教えが徹底されているといえます。
後から来た生徒が乱れていた靴を直すような場面に遭遇したら、その道場に通うことで基本的な礼節が学べると考えて良いでしょう。
道場を見学する際には、後から来た生徒の様子も見るようにしてみてくださいね。
怒り役の師範の存在
もし、道場に複数の先生が存在するのであれば、それぞれの役割分担がなされているのかもチェックしておきたいところです。
子どもの心身を鍛えていくために大切な「自主性」を身に付けるには、生徒各自が自分で考えていくための時間が必要です。
良い先生は生徒が自主的に考え、動けるように指導します。
また、「生徒の成長を待つ」という優しさも備えています。
しかし、生徒がその部分に甘えてしまっては意味がありません。
そこで、大切なのが「ゆるんだ気持ちを引き締めてくれる先生の存在」です。
もちろん、先生が一人であっても優しさと厳しさを伝えることはできますが、明確に役割を分担しておくことによって、メリハリある指導が可能になるのです。
メリハリのある指導によって「いざという時の集中力」を養うことができるため、その後の人生においても必ず役に立つはず。
そのため、道場見学の際には、先生の役割が分担されているかチェックしておくと良いですよ。
練習メニューの確認と練習中のチェックポイント
道場によって練習メニューが違い、また、時期によっても変わってきます。
大会前や昇給審査の前であれば、組手や型の練習を重点的に行う道場もありますが、基本的には大まかな練習メニューが決まっています。
まずは「基本練習」、続いて「移動練習」、その次に「打ち込み」、最後に型や組手の練習と続いていく道場がほとんど。
道場によっては、「組手の週」「型の週」といったように、週によって練習メニューを変更しているところもありますので、気になる道場を見つけた際には2、3回は見学に行くようにすると良いですよ。
ここでのチェックポイントにも「先生の役割」が関係してきます。
生徒が多くなればどうしても個人の差が出てきますし、生徒の年齢がバラバラであることから、経験年数にも差がでてくるでしょう。
複数の先生が在籍する場合はクラス分けを行い、それぞれのクラスを担当しながら指導することができます。
同じ練習内容であっても、指導すべき事柄は変わってきます。
例えば、基本練習の正拳突き。
初心者の場合は動きを覚えることから始まりますが、経験年数が長い生徒であれば「より正確な動きや引手を意識する」「腰の切れ」などといったように、指導の内容が変わってきます。
練習内容のチェックポイントは「型の解説を行っているかどうか」という点。
空手の型にはそれぞれの動きに意味があり、その意味を知ることはとても重要なことなのです。
意識しながら練習するのと、意識できないまま練習するのとでは大きな差が生まれます。
型の練習中には、先生がどのような指導をしているのかを注意深く観察してみてくださいね。
それから、「組手の練習は試合形式でしているか」という点も重要です。
空手の試合は自分の成長や力を試す機会であり、試合の中でしか学べないこともあります。
日頃の練習の中であっても、試合を意識した試合形式の組手を行っているのかが、その後の試合で大きな差を生むようになります。
だからこそ、日頃から試合を意識した組手が重要になってくるのです。
まとめ
空手には多くの流派があり、道場の数はそれ以上に多く存在するため、どこの道場でどのような先生に指導を受けるかによって、その後の空手人生が大きく変わります。
せっかく歴史ある武道のひとつである「空手」を習うのであれば、しっかりとした先生がいる道場に通うようにしたいですよね。
心身共に強くなるということは決して簡単なことではありませんが、トライしてみる価値は充分にあります。
道場見学の際には、ぜひ上記で紹介したチェックポイントを参考にしてみてくださいね。